Message代表メッセージ

2010.11.24

地域公共交通を延命策から夢のある21世紀の政策へ!

両備グループ 代表 
小嶋光信

11月24日衆議院会館で行なわれた国土交通部会交通基本法ワーキングチームの三日月座長に招かれて、私がこれまで取り組んできた地域公共交通の再生、実現に向けての提言を講演させていただく機会を得ました。最近特に過疎地域を含む地域の公共交通に目を向けていただいていることは感謝に耐えないのですが、現状の公共交通の議論が延命対策に終始していることが大変気がかりです。

公共交通は、国家の生活や産業を支える大動脈であり、静脈であり、延命でなく発展させることが再び日本を、地域を活性化させるだけではなく、国民を元気にするツールで、国家的総合福祉政策であり、環境政策だということを理解していただくために、今回はそこに力点をおいて主張させていただきました。交通は国家戦略であり、ネットワークなのです。

以前は、国民の移動のために鉄道が敷設され、バスが全国展開され、そして国民が車という移動手段を持つことで、道路網、高速道が整備されました。もともと、国民の移動のために進められてきた政策ですが、少子高齢化社会に向かって、今度は免許を持っていても自ら運転して移動できない高齢者や通学への移動する手段をどう保証するかに問題の力点が変わってきたのです。私が主張する公設民営は、車社会では道路が公共財でしたが、少子高齢化社会では、移動手段も公共財になってきたということです。

実は、本質に戻って、国民の移動する手段が公共財なのですが、車社会は道路さえ整備すれば、移動は個人が、民間が自ら進めてきたのです。これからの時代はまた本質に戻って、どうやって交通弱者の移動を保証するかということに力点が移ったのです。簡単にいえば「道路から、移動する手段の確保」へ力点が移ってきているのです。まさに国家の国土交通の基本的問題になって、旧運輸省と旧建設省が合併して出来た国土交通省という有機的結合のテーマなのです。道路も公共財ですが、21世紀の高齢化社会では電車や船やバスも公共財に逆戻りしてきたと理解しないと、21世紀に向けた地域公共交通の夢のある改革はできません。

地域公共交通再生の実現へ向けて

「資料1」→PDFダウンロード

1.11年前の社長就任時に地方公共交通の行く末を分析して愕然

私は1999年、両備グループの中核企業である両備バス(現・両備ホールディングス)の社長となり、改めて公共交通事業の分析をして驚いた。 それは、路線バスの規制緩和を2002年に控え、日本の公共交通政策が現状のまま続けば、毎年2~3%の顧客減少が数十年にも及ぶ業界環境の中、補助金をもらわず頑張ってきた両備グループの電車や路線バス事業でさえ、今後、約10年で駄目になると推測されたからだ。もちろん、補助金をいただいていた赤字企業は、規制緩和のときすでに大きな繰り越し欠損を持っていたから、数年しか持たないだろうとも予測していた。

2.先進国で公共交通を民間に任せきったのは日本だけ  

→ ヨーロッパはフランスなどを中心に交通権を認め、公設民営で公共交通を存続

研究の結果、先進諸国の中で、公共交通を民間に任せきっている国は日本だけだということが分かった。特にヨーロッパでは、道路を造り、マイカーを増やす政策をとれば、顧客の半分以上がマイカーに移行し、公共交通は経営できなくなるだろうという末路を知っていた。 従って、マイカー時代は、交通弱者という免許を取得できない子ども達や、免許があっても運転できない高齢者や、経済的に運転できない人達を生みだし、マイカー政策だけでは交通の自由な往来ができなくなるという懸念があることを知っていた。アメリカ型のマイカー社会は交通弱者の交通問題を招来するとして、そこから、フランスなどを中心に、ここに等しく国民に交通を保証する権利、すなわち「交通権」という概念が生み出された。 そして、その交通権を保証する手段として、「公設民営」という方法が一般的にとられ、上下分離により、行政と民間の役割分担が行なわれている。

3.規制緩和と三位一体改革での地方財源の欠乏で、地域公共交通は存続の危機

その状況の違いの理解が十分されないまま、規制緩和により地方では、ほとんど赤字の路線バス事業なのに、補助金制度が大幅に変革し、減少し、退出自由と費用対効果の概念導入で、路線の減少、公共交通企業倒産を招くことになった。唯一の収益源として赤字路線維持のために始めた高速バスも、違法と思われるツアーバスや、高速道1000円政策で収益力を失って、逃げ場がなくなった。

4.公共交通衰退の理由

一般的に、公共交通衰退の理由としては、下記の5点が考えられる。

(1)マイカー時代の到来で利用者の50~60%の顧客を喪失したこと。

(2)地方都市のスプロール化により、交通渋滞が慢性化し、路線バスが定時性を喪失。それが悪循環となり、一層マイカーを増加させる結果となったこと。

(3)補助金行政の副作用により

ア)経営不在を助長する結果となったこと。
コストを削減すれば補助金が減るという誤った経営感覚が生まれ、経営改善努力が進まなかった。

イ)顧客不在の自滅的な労使不仲を助長する結果となったこと。
ストをして顧客が減少し、業績が悪化すれば逆に補助金は増加し、業績が悪化したら運賃を値上げし、値上げで顧客が減少して業績が悪化すれば、また補助金枠が拡大するという誤った経営判断と労働運動を生み、「負のサイクル」となった。

(4) 規制緩和が衰退に拍車をかけたこと。
衰退産業の規制緩和は過当競争を生み出し、参入の緩和から供給過剰を引き起こし、あらぬ競争が不当廉売を生み出し、経営を維持するためにコスト引き下げの必要から賃金が低下し、結果、労働の質が低下することで事故を増やし、安全・安心の喪失につながっていった。他の産業より低い賃金によって、良い人が集まらぬという人材力の低下が起こり、さらに業界の衰亡を招いている。

(5)公共への誤った費用対効果の概念導入
公共という事業は、儲からなくても国民へ保証しなくてはならない事業だが、その公共事業に費用対効果の概念が持ち込まれ、儲からない路線やバス事業はやめれば良いという理論で、路線廃止や事業の縮小、もしくは廃止が地方で加速し、ついに地方では老人や子供の移動手段がない地域が現出してしまった。公共的事業の非能率、非効率の是正はしなくてはならないが、誤った費用対効果の概念導入により、地方では、すべての公共事業が廃止・縮小しなくてはならなくなる。 本来、公共交通とは、儲からなくても住民に保証しなければならない移動手段であるはずだ。

5.これは大変だということで、早速公共交通再生に向かっての努力を開始した。

(1)「公共交通利用のパネルディスカッション」を開催
着任早々岡山県国道事務所を訪ねて、今後は道路を造ることと同時に、道路を効率的に使うような国民的努力が必要な旨を説明した。すなわち、地方都市の道路渋滞は朝晩の通勤通学時に発生することが多く、その数時間のために道路を造るよりは、バスや電車による公共交通が分担することが国民経済的に有利であると力説した。

ちょうどTDM(交通需要政策)の推進を国道事務所として考えていたということで、このパネルディスカッションのスポンサーを引き受けてくれて、地元のラジオの生放送で行われた。パネラー(利用者代表)としてご参加の女性が、バスや電車による通勤・通学の占める割合が10%以下と知って、90%以上はマイカーや自転車や徒歩であり、むしろ輸送割合が大部分を占めるマイカーこそが公共交通だと発言された。その上さらに、もうそんな割合しか輸送していない電車・バスはなくても、地方ではマイカーで十分だと言うのだ。この認識には、正直腰が抜けるほどビックリした。彼女は生活ですでに電車・バスを使うことがなく、必要性を全く感じていなかった。

私は、「公共交通というのは、利用者が多い少ないということではなく、それを必要とする、免許を持たない子供達や、運転できない高齢者の方々に移動手段として社会が備えていなくてはならない交通手段ということです」と説明した。続けて「貴女にとって今はマイカーで生活に支障はないかもしれませんが、お年を召して運転できなくなったときに必要となるのが公共交通なのです」と述べると、渋々納得されたようだった。マイカー時代の恐ろしさは、働き盛りの社会人達が一番、その必要性を痛感していないということだ。いずれは公共交通のお世話になるのだが、世論として声の小さい交通弱者の皆さんだけが必要性を感じる交通手段だということが、ミスリードになった規制緩和と地方の公共交通の衰退に歯止めが掛からなかった一因かもしれない。

(2) 「岡山県公共交通利用を進める県民会議」を結成
社会的な公共交通復権の錦の御旗として、「岡山県公共交通利用を進める県民会議」を結成していただいた。年に一回、岡山県知事が公共交通で通勤する、月に一度、10社程度の大手企業が公共交通利用の日を定め、社員がマイカーでなく可能な限り公共交通を利用するという程度の運動だが、皆さんのご協力は涙が出るほど嬉しかった。

(3) 「オムニバスタウン」の導入
岡山市、福山市でオムニバスタウンの導入をお願いし、バスの利便性の向上を図った。

(4)魅力ある定期や割引の導入
パーク&バスライドやE-定期券(エコ定期券)、ことぶきパスやサマーKidsパス(夏休み子供パス)などの魅力ある定期や割引を導入した。

(5)フランス生まれの広告付きバスシェルターを設置
バスシェルター無しのバス停では、お客様にバスを待っていただけないので、雨や風の日でも快適にバスをお待ちいただけるよう、広告を付けることで管理費が無償のバスシェルターを作ってくれる三菱商事との合弁会社エム・シー・ドゥコーのバスシェルターを日本で初めて岡山市に2基設置  → それが契機となって全国的に普及

(6)「時刻表見えルン♪」(簡易設置型 バス時刻表照明装置:LEDランプ使用)の開発 暗闇の中ではバス停の時刻表が見づらいので、両備グループのソレックスで簡易夜間照明を開発した。これは電池式で、半永久的に使用可能なLEDランプを使用した半年間メンテナンスフリーの優れもので、どんな既存バス停も5千円弱で照明付きバス停に変身して、高齢者の皆さん方に喜んでいただけた。

(7)競合会社との共同運行 共同運行により、クリームスキミングや行き過ぎた競争の改善を図った。

以上、利用促進を図るプランを次々と実施してみたが、お客様の減少は止まらず、それでは目に見えるように「21世紀のまちづくり」を提案することにした。

6.地域の活性化のツールの一つが公共交通

「21世紀のまちづくり」→ それは名づけて「公共交通利用で、歩いて楽しいまちづくり」運動だ。そのために、まず下記の事項に取り組んだ。

(1)未来型LRT「MOMO」(100%超低床式路面電車)
地元・岡山市出身の電車のトップデザイナー・水戸岡鋭治氏のデザインで、未来型LRT「MOMO」を2002年に投入した。このLRTは、初めて開設された「日本鉄道賞」を受賞し、一躍、全国的に有名になった。MOMOのデザインは、富山ライトレールでも採用された。

(2)岡山市中心部の活性化
空洞化する市中心部の活性化のために、108mの超高層マンション2棟(両備グレースタワー)を建設した。高齢者の皆さんを中心に好評で建設着工と同時に完売した。

7.公共交通の存続や再建への助言依頼が殺到

市民団体の「RACDA」が中心となって、両備グループの岡山電気軌道の取り組みが全国に紹介され、全国から公共交通(バスや電車)の存続、再建や新規敷設等の相談が舞い込んだ。一方、本来は岡山市内の電車の延伸や、バスの活性化を図るための施策だったが、両備グループの経営状態や、グループの中核的な会社・両備バスの経営に心配が無かったので、岡山市内では公共交通の将来不安を全く感じていただけなかった。必要を感じたときは手遅れだが、日本人は問題が起こらないと機運が生まれないことが分かった。 それならば、実際に困窮されている地方の公共交通の改善にお力を貸そうということで、ボランティアで再建案を作り、助言をした。

8.津エアポートラインで「公設民営」の効果を実証

地方公共交通再生のポイントは先進国型の「公設民営」だが、この経営スタイルは三重県津市から中部国際空港への海上アクセスとして開設した津エアポートラインで実証実験をして成功することができた。

ボランティアで分析をお引き受けした結果、

(1)需要が少なくて、県内5航路は無理なこと。

(2)津市からの航路が、需要が少ない中でも唯一期待でき、船や港、待合所や駐車場は公設とし、運航のみ民営とする案なら航路開設できること。

(3) 3セクは責任体制が不明確で、意志決定が遅れるので、100%単独出資の民営会社とすること。

と提案した。経営は地元の海運経験があり、信用ある企業を公募するようにサジェスチョンした。しかし、地元から海運経験のない企業の応募のみで、地元ではないがこのプランを作成した弊社に公募参加のお願いが各方面からあった。高速艇を市に寄付する素晴らしい地元企業の熱意にも絆されて、航路開設を決意した。これが空港開業人気と万博効果で予想以上の一過性の顧客増加で好成績だったのを横目で見た隣市が、相次いで一航路だけとの約束を無視して航路開設をした。案の定一過性の需要が剥げて、他航路は瞬時に業績不振となり、倒産や廃業が相次ぎ、その救済に両備ホールディングス(津エアポートライン)が松坂航路を再建することになった。
その後から、次々と電車やバスの再建のご依頼があり、ボランティアで再建の処方箋を作成して差し上げた。

9.和歌山電鐵の再生で「公有民営法」成立の一助に

その中の一つが南海電鉄貴志川線で、年間5億円もの赤字を計上して廃止が発表されていた。廃止発表と同時に、路線存続運動として「貴志川線の未来をつくる会」が展開され、約6千人もの熱心な会員の皆さんが「乗って残そう貴志川線」というスローガンで活動されていた。彼らから岡山電気軌道へ熱心なアプローチがあり、

(1)公設民営とすること。

(2)運営会社は3セクとせず、100%単独出資とすること。

(3)利便向上は和歌山電鐵内の運営委員会で計ること。

上記(1)~(3)を中心に、5億円の赤字を年平均82百万円以内とする案を作って差し上げた。 運営は地元企業がするようにと公募したが、やはり鉄軌道会社の応募が無く、結果我々が経営するようになった。実際に不可能と思われた再生を決意した背景には、実質、公設民営のスキーム作りに協力してくれた行政の努力と、会社幹部のしっかりした分析、社員にも極秘で貴志川線に乗って、各駅を降りて歩き回って得た情報での確信があった。

現場での働きぶりを見て、人件費コストは半分に出来る自信と、道路環境が悪く営業努力の可能性や、西日本最大の三社参りが忘れ去られていたことから、観光掘り起こしの可能性が見えたことだ。 そして、再建の要請をお引き受けしたのは、最終的に

(4)市民運動が上滑りでなく本物であること。

(5)行政の協力体制がしっかりしていたこと。

(6)地域が人口増加地帯であったこと。

を確認できたことが意志決定の理由となった。
初代の常務取締役への発令は「朝晩は乗る方の乗務、暇な昼間は常の方の常務を命ずる」とした。現場は直接人員が中心で、常務自ら運転して安全体制のチェックをして、かつコストパフォーマンスが良いスリム化した組織が特徴だ。和歌山電鐵の再生が順調に進んでいる要因は、市民団体の熱心な協力と、県と2市(和歌山市、紀の川市)がしっかりまとまり、行政努力をして下さっていること。年間49件ものイベントをはじめ、いちご電車・おもちゃ電車・たま電車という魅力ある電車の相次ぐ投入に加え、三毛猫のたま駅長の存在が大きい。

たま駅長は貴志駅の隣のお店の猫だったが、住処が公道に置かれており、まさにオープンの2006年4月1日に撤去するよう言い渡されたのだ。困惑された飼い主が、ちょうどセレモニーが終わったそのとき、追いかけてこられて、たまの住処を駅舎に置いて欲しいと懇願された。素晴らしい魅力ある三毛猫だというその飼い主の熱意もあり、見てみると、一目で「この子は貴志駅の駅長だ」と閃いた。経費節減で無人駅にしなくてはならないことが心の中で寂しかったこと、言われなく動物を公共の場に置くとお客様や社員のなかで嫌がる方々が出るだろうことなどが頭をよぎり、何とか助けてあげたいという気持ちで咄嗟に考えた結果だった。正社員の駅長なら文句は出ないだろうと、翌年1月5日に発令したところ、あれよ、あれよと「客招き担当」の駅長は、課長職のスーパー駅長に昇格し、わずか数年で、和歌山県に年間11億円の経済効果ということで県知事から「勲功爵」の称号をいただいた。助けようと思ったら、かえってこちらが助けられることになった。 和歌山電鉄の事例が一つの参考になり、地方鉄道に「公有民営」の法制化が実現した。 これで約90の地方鉄道のうち70くらいが生き残る可能性が生まれたといえる。

10.中国バスの再生で補助金制度へ経営改善のインセンティブが法制化

次に、広島県で経営難に陥った中国バスの再建を実施して、補助金制度の副作用や、不仲な労使関係が顧客離れを引き起こした主因であることを実証できた。 再生によって、補助金を1億円以上削減(2008年度)し、事故が8分の1に減少、苦情が4割減少した。過去の苦情が「おほめの言葉」へ変化した。 中国バスの再生により、地方路線バスの非効率な補助金問題が解明され、補助金に経営改善のインセンティブ導入の法制化が実現した。

11.地域公共交通の現行の維持の仕方は延命治療の効果しかない

これらの法制化で、地域公共交通の見直し機運と、種々の支援体制ができたが、これで十分かというと、「やっと端緒」なのである。すでに協調補助は、黒字企業には有り難いが、地方の大赤字の路線企業では機能せず、バリアフリー、CNGなどの環境対応、ICカードやバスロケなどの情報化は、東京、大阪、名古屋の大都市しか進められない事態に直面している。韓国のバス事情を視察して分かったことは、日本の制度は、官と民の役割が不明確で、赤字補填が中心の補助金というカンフル注射に頼っている弊害が見えた。

12.韓国での先進的取り組み ・・・ 日本の京都市・名古屋市を研究しての発展系

韓国では、ソウル市などで、高速道路を川に戻し、マイカーから公共交通への切り替えが実行された。道路を市内バスと郊外バスの専用レーンを中心に切り替え、マイカーは駐車違反等で道路を塞ぐと罰金となり、またマイカーで市内に3人未満で入るとペナルティーとして通行料を徴収される。実施されている公共交通中心の政策は、バス会社が儲からず、社会が便利になるバリアフリーや環境対策、情報化は行政100%で社会的装置として公共が負担とはっきりしており、日本ははるかに対応が遅れた。ICカードを導入しても、お客様便利だけで終わり、顧客が増えないことが幣グループのシステム導入でも分かり、その結果は大赤字の事業となってしまった。

13.交通権の考えは社会主義的か

地方公共交通再生の切り札は公設(有)民営だが、これは全く社会主義的だという批判がある。それは、地方の実情と公共交通の使命を理解できない大都市的発想で、高齢化の進む地方では住民の交通権を保障する、最低限の社会的移動手段といえる。 どうしても、何々主義で纏めたいなら「人道主義」が正しいだろう。

14.延命治療型の地域公共交通政策から夢のある政策へ

後述するエコ交通大国への転換という提案だが、これには財源が一番の問題だ。 最低年間予算2千億円×10年という計画で、世界で一番進歩した公共交通中心の社会をつくることが、地球環境に寄与し、高齢化社会に希望を与える喫緊の政策だといえる。 財源は、営業権をマイカーに譲った社会的保障と考えるのが先進国では一般的だ。さすれば、日本では道路財源との協調が必要だった。

15.「エコ公共交通大国構想」の提言

エコ公共交通大国の実現 : 年2千億円×10年間 = 2兆円の国民的プロジェクト
地域公共交通は、事業者の約7割が赤字で、高齢化や環境に対応したLRTやバスを導入し、情報化された輸送システムにすることは不可能だ。 従って、公設民営を軸として、この10年間で国家施策として地域公共交通を次世代への近代化を提言する。すなわち、LRTと電気バスなどで、環境に優しく高齢化に対応したバリアフリー化と、交通のネットワーク化を情報システムで構築する提案だ。

16.具体的な提案:エコ公共交通大国おかやま構想

( 資料(1)PDFダウンロード)

政令市となった岡山市内交通を、LRTと新世代バス(電気、LNG等)を中心として、 環境と高齢化に対応し、情報システム化した21世紀に誇れる公共交通に大変革することを提言した「エコ公共交通大国おかやま構想」を今年2010年5月に発表。 岡山市の発展は、交通の拠点性を活用した商都・学都・医都としての魅力を発揮するとともに、先進的に環境と高齢化に対応した生甲斐のある都市機能を創ることが急務だ。

 

結 論

  1. 公共交通は交通弱者の移動を保障し、環境社会の国際公約を守る最大のツールであるばかりでなく、歩行障害を4分の1、老年期認知症の発症を3.5分の1も劇的に抑え( 資料(2)PDFダウンロード)、メタボも8割改善できる(資料(3)PDFダウンロード)社会的ツールとして高齢化社会に生甲斐と、福祉の財政改善をもたらす地域活性化と、国家的総合福祉政策の大きなツールといえる。   → 交通基本法の成立が急務
  2. 延命的地域公共交通政策から、地域の夢を造る政策への転換が急務である。
  3. 地域公共交通の抜本的改革に公設(有)民営や公設民託が効果的  → 東京、大阪、名古屋などの大都市は、民設民営が効果的である。
  4. 財源は、現状に加え、暫定税率を環境税化するとき以外にタイミングは無い。
  5. 暫定税2兆5千億円の約10%(2~3千億円/年)を、10ヵ年かけての国家プロジェクト「エコ公共交通大国構想」が地域の夢を創り、日本が世界に誇り得るプロジェクトになる。
  6. エコ公共交通大国を実現するハードとソフトは自動車産業を補完する輸出産業となり、世界の環境のソリューションとしても貢献するだろう。

交通基本法の成立と財源確保を熱望する  

今が地方に高齢者や子供たちが自由に移動を保証され、安心して住めるようにするラストチャンス  

現状のまま放置すれば、10年内に70%程度の地域公共交通のネットワ-クを失うだろう…。

未来に間違いのない「地方公共交通という社会的ツール」のバトンタッチをしていきたい。

両備グループ

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