和歌山電鐵社長
小嶋光信

売上3億円で費用が8億円、年間5億円もの大赤字路線として再建が不可能と思われ、廃線の危機にあった貴志川線の事業を、両備グループの岡山電気軌道がヨーロッパ型の公設民営の手法で再建を引き受け、平成18年4月1日に路線を引き継ぎました。

当時は、全国で約70社の赤字地方鉄道の再建策はないと業界も行政も思っていました。実際和歌山の市民も、開業当日の伊太祈曽駅で手を合わせて感謝してくれたおばあちゃんお二人が口をそろえて「あなたが再建を引き受けてくれた社長さんですか? ありがとうございます」とお礼を言われたあとに、「でも逃げないでね」とニヤッと笑われたように、とても10年は持つまいと思われていました。

しかし、「貴志川線の未来をつくる会」はじめ市民の皆さま、行政の皆さまの応援に、たま駅長、ニタマ駅長や楽しい電車たちと社員の頑張りで、それまで減少の一途であったお客様は奇跡的に20%近くも増加し、経費節減にも努めることで再建軌道に乗せることが出来ました。

お陰さまで2016年1月18日に和歌山県、和歌山市、紀の川市とこの4月以降の10年間について合意書を結ぶことができました。
理想とする公設民営までにはなりませんでしたが、準公設民営として、公が設備投資費等について補助し、運行は100%和歌山電鐵が責任を持つという形態です。
すなわち、設備費や修繕費の一部は公が負担しますが、今度は運営にたいする82百万円/年の補助金はなくなるという一見厳しいものです。

今までの再建の10年間で、再建前に比べ大幅に収支は改善し、当初計画にはなかった施設の老朽化や自然災害や電力料金値上げを吸収して、南海電鉄時代は5億円の赤字を82百万円/年以内の補助金で乗り切ってきました。その上補助金も使い切らずに次の10年にも残せるでしょう。

今後の10年間は、運行の補助金の82百万円が全て無くなるのですから、厳しいと言いましたが、再建を決意した時と比べれば、経営の基盤ができています。高齢化や沿線道路の整備(高速道路インターチェンジ設置に伴う周辺の既存道路のバイパス整備)などの逆境が予想されますが、皆さまのご支援と、我々の気力とアイデアで、困難を乗り越える力をさらに和歌山電鐵から引き出していこうと決意しています。

今後の運営は、我々の努力もあってできた交通政策基本法の精神である、公共交通の事業者の孤軍奮闘型から、国、地方自治体、市民と事業者が一体になって維持、発展する協力体制で臨むことになります。すなわち、国、地方自治体は設備費と修繕費の負担を、市民は公共交通利用と適正な運賃負担を、事業者はアイデアを駆使した経営努力という責任範囲をそれぞれ分担して、地域づくりの一環として維持、発展させていくという仕組みです。

今後10年 の行政との協定内容の変化等は以下のごとくです。

  1. 運営費補助金82百万円が0円となり、設備投資支援型の準公有民営に転換します。すなわち運営については補助金型から実質民営化に変更されます。
  2. 更なる市民支援型に進化します。市民の皆さまには利用促進だけでなく、適正な運賃改定をお願いします。
    過去の10年の再建計画では、開業から数年後に最低1回は、予定していた運賃値上げの実施を見送り、大きく経営改善を図ることができました。今後は、運営補助金がなくなることから4月から逸走率3%を含む運賃14.%程度引き上げ(旧補助金の約半分を利用者負担に転換)を地域のご理解もあり実施します。
  3. 地域づくりに活きるように鉄道の運営を図ります。

今後は、いわゆる行政と市民と交通事業者の“三方よし”になるように努力します。

新しい協定のもと、今後の4月以降も引き続き皆さんのご支援をお願いするとともに、社員一同さらなるアイデアと汗で乗り切る所存です。

20160118

2016.1.18
和歌山電鐵

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